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~第三部 日本の異変①~ マハー・カーラの神殿

Author: 倉橋
last update Last Updated: 2025-08-03 14:34:08

 ここで私たちは、ひとまず上杉悠馬君の手記から離れ、マハー・カミラを巡る様々な出来事を見てみま

しょう。

 それというのも、幽霊塔に監禁されていた悠馬少年には知る由もないことですからね。

 皆さんは闇の世界を知っていますか?

 光が全くない世界を知っていますか?

 それはなにも見えない世界なのです。

 時々、聞こえる声や物音だけが、あなた自身が孤独ではないことを教えてくれるのです。

 闇の世界の中。マハー・カミラはたったひとり、階段を上がっていきました。

 どこまでも続く長い階段。

 マハー・カミラが手にした燭台。

 赤く長いローソクの赤い炎に照らされた光景が、この世界に階段があることを教えてくれるのです。

 マハー・カミラは聞いたのです。

 階段の左右から響く男女の叫び。

 その叫びが、いま、この世界に数多くの人が集まっていることを教えてくれたのです。

「マハー・カミラ!お前は一族の恥さらしじゃ」

「マハー・カミラは一族の名前を汚す悪党だ!」

「マハー・カミラ!お前は神ではない。なぜここにいるのじゃ。出て行かぬか!」

「助けて!マハー・カミラが四千年続いたマハー一族を滅ぼしてしまうよ。早くだれか懲らしめておく

れ」

「マハー・カミラよ。お前はこれから

『皆を苦しめて絶望を与える憎々しい赤の悪党』

と名乗るのだ」 

 マハー・カミラは舌打ちしました。

「わたしを追い落とすつもりか。そう簡単にいくと思ったら大間違いだ」

 叩きのめしてやろうと思いましたが、不愉快な声の主たちがどこにいるのか、ローソクの炎では分かりません。

 だが階段の上。階段を上りきったところに立つ者の姿だけは、マハー・カミラにもよく見えたのです。

 巨大な裸足の脚でした。

 巨大な脚は青銅に輝き、電柱を十本くらい束ねたほどの太さでした。

 そして巨大な脚の周囲から、一斉に美しい女性の歌声が流れたのです。

 ♬マハー・カーラ

 マハー・カーラ

 みな殺し

 殺せ

 マハー・カーラ♪

 ♬マハー・カーラ

 マハー・カーラ

 血を流し

 肉を裂け

 マハー・カーラ♬

 歌声が終わった後、遠い暗黒の空から声が降ってきたのです。

「マハー・カミラよ。わたしはマハー一族の長として、お前を側近のひとりにしようと考えていた」

 体が押しつぶされそうな重々しい声でした。

「お前が二千年の間、マハーの神族《しんぞく》としてよく働いていたこと。わたしはよく知っている」

 マハー・カミラの顔に緊張が走ったのです。

「伯父上。ありがとうございます」

「わたしは神族の長として、マハーの神殿で『伯父上』と呼ばれることを望まぬ」

 マハー・カミラがひざまずき頭を下げます。

「お許しを。暗黒の偉大な神。マハー・カーラ様」

「お前は今夜、過ちを犯した。たった今、わたしを『伯父上』と呼んで貶めた」

 マハー・カミラの肩が震えています。

「そして数時間前。血と肉と化し、しゃれこうべをわたしに捧げねばならない者の生命《いのち》。お前

がマハーの掟を破って助けたこと。わたしはよく知っている」

「恐れ入りました」

「お前のふるまいは、わたしを躊躇させる。このような娘を側近に加えてよいものかとな」

「誠に申し訳なく存じております」

「ならば答えよ。マハー・カミラ」

 マハー・カーラの声がマハーの神殿に響き渡ります。

「お前はどうするつもりなのか?明日、お前の生贄となった少年のしゃれこうべを、わたしに捧げるとい

うのか?さあ、いますぐ答えるがよい」

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  • カノ女と僕の幽霊塔~殺戮の神、大黒天の一族、マハー・カミラに監禁された少年の運命は?   ~第二部⑩~ 食事時間って緊張の連続

     マハー・カミラさんが、僕の食べたい鍋料理を聞いてきた。 僕はまず、貯蔵庫にどんな食糧があるか聞いた。 マハー・カミラさんの話を聞き、家でよくつくった野菜とうどんにお餅、鶏肉少々でつくる簡単な鍋料理のつくりかたを説明した。 マハー・カミラさんの杖が何回か縦横十文字に振られて三分後。 大きな鍋に、僕が教えた通りの鍋料理ができあがってた。 最後にマハー・カミラさんが杖を旋回。部屋の中央に白いテーブルと椅子が出現した。 そのとき、僕ってすごくびっくりした顔したみたい。 マハー・カミラさんが冷たい笑い浮かべた「わたしをだれだと思っておる。マハー・カーラの一族。赤の女神と呼ばれた神だ」 何回か杖が振られ、テーブルの上にご飯と鍋料理をついだお椀。そしてアイスクリームが盛られた銀の食器がふたつずつ並んだ。 僕ら向かい合わせで座った。「あの……」「どうした?少年・悠馬」 僕って椅子に座ってるけれど、後ろ手に縛られたままだもの。 せっかく料理をつくっていただいたんですが、これでは食べることができません。ロープをほどいてくれませんか。逃げたりなんかしません」「それはできん。お前はわたしの生贄だ。死ぬまで縛られたままでいるがよい」 「でも……」 そのときの僕ってすごく悲しそうな表情だったみたい。マハー・カミラさんが困った顔をした。わざとらしく咳払い。「少年・悠馬。お前は生贄なのに注文が多い。いけないことだぞ」  少し後の時間。 僕らの座ってるテーブル。 マハー・カミラさんったら右手に箸、持ってる。 なにしてるかっていうとね。 ご飯やおかずを僕の口に運んでくれていた。 僕のすぐ隣に座って体を密着させて……。「熱くないか?」「大丈夫です」「次は何がいいか?」「うどんが食べたいんですけど」「分かった」 僕の口にうどんを運んでくれた。 思い出したようにハッとする。「勘違いするな!」 僕のこと、こわい目でにらみつける。「少年・悠馬。お前に言い聞かせることがある」 なんで怒っているのか、いまひとつ分からない。「お前は三日後、死ぬのだ。生贄というものは、どんな場合であれ、最後まで大切にするものだ。お前の血肉を美味しく頂くため、言うことを聞いただけだ。《》わたしの気持ちを勘違いすることは絶対許さん」 やっぱり分からない

  • カノ女と僕の幽霊塔~殺戮の神、大黒天の一族、マハー・カミラに監禁された少年の運命は?   ~第二部⑨~ マハー・カミラさんってよく分かりません

     三十分くらいでマハー・カミラさんは帰ってきた。 バニラからチョコ、ストロベリー、抹茶、大納言etc……。 全部で十数種類。 アイスクリームの大きなカップが、目の前に静止して浮いている。「ありがとうございます。でもこんなにたくさん、ちょっと食べ切れません」「明日また食べればよい。この杖を使えば、ずっと冷たいまま、溶けることはない」「お金はどうしたんですか?アイスクリームを売っている店の場所とか分かるんですか?」 なんとなく気になったので質問してみた。「お前はわたしをだれだと思っている。紀元前二三〇〇年前、インダス文明の始まりと共に生まれたマハー・カーラを頂点とするインドの神の一族のひとりだ。マハー・カーラはその後、中国、日本と伝来し大黒天となった由緒正しい神だ」 マハー・カミラさんが胸を張る。「マハー・カーラに及ぶことはできないものの、森羅万象、このマハー・カミラにできないことはない。それでも少しばかり時間を必要とする場合もある」 ふーん、そうなんだ。「アイスクリームについては、時間を短くするため、お前の協力を仰いだ。それだけのことだ」 マハー・カミラさんが落ち着いた表情で答えた。「さて少年・悠馬。お前はどのアイスクリームにする?一番好きなものを今日、食するがよい。明日はまた別のものを選べばよい」 そう僕に聞いてから、一瞬だけ僕に背を向けた。 僕の方に向き直ったら、厳かに僕のこと、にらみつけてきた。「勘違いするな!」 突然、大声で怒鳴りつけてくる。「少年・悠馬。お前は明日死ぬのだ。マハー・カミラの領域を侵した者の運命なのだ」 僕は下を向いた。僕の運命は、やっぱりもう決まってるみたい。「残ったアイスクリームはわたしがいただく。お前の血肉のフルコースのデザートにな」 マハー・カミラさんの声が響いた。 覚悟してたんだけど、やっぱりひとしずく涙が落ちた。「明日死ぬ少年・悠馬。どれにするのか?」 本当にマハー・カミラさんは意地悪だ。 僕が黙ってたら、僕の顔、のぞきこんできた。「明日はわたしに食される少年・悠馬。なぜ答えない?」「いりません」 そう答えたら、また涙がひとしずく。「ぜんぶマハー・カミラさんがどうぞ」 そう答えてから、涙が後から後から流れ落ちる。 マハー・カミラさんが僕の肩に手を置いた。「三日後まで

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